お墓の維持や管理に関する悩みから、墓じまいを検討されている方が増えています。しかし、墓じまいに伴う費用負担は決して軽いものではなく、「東京都で利用できる補助金はないだろうか」とお探しなのではないでしょうか。
また、手続きが複雑そうだと感じたり、誰に相談すればよいか分からなかったりする不安もあるかもしれません。自治体ごとに異なる補助金の種類や条件を自分で調べるのは大変な作業です。
この記事では、そのようなお悩みを抱える方に向けて、東京都における墓じまいの補助金制度に関する情報を網羅的に解説します。この記事を最後までお読みいただくことで、費用に関する不安を解消し、失敗や後悔のない墓じまいを進めるための知識が身につきます。
この記事を読むことで、以下の点が明確になります。
- 東京都で利用できる墓じまい補助金の有無と種類
- 補助金の対象者や金額、具体的な申請条件
- 改葬許可証など必要な手続きと全体の流れ
- 費用を抑えつつ失敗しないための注意点
東京都の墓じまい補助金の現状と基本情報

ここでは、東京都における墓じまい補助金の全体像と、知っておくべき基本的な情報について解説します。
- 自治体によって異なる補助金の種類
- 補助金の対象者となる詳しい条件
- 補助金の金額相場はどのくらいか
- 補助金が使えないケースも知っておこう
- 墓じまいに必要な費用の内訳と総額
自治体によって異なる補助金の種類
墓じまいを検討する際にまず気になるのが、公的な補助制度の有無です。
結論から言うと、2025年7月現在、東京都全体で一律に利用できる墓じまいの補助金制度は存在しません。しかし、一部の区市町村では、独自の制度を設けている場合があります。これらの制度は、一般的な「補助金」という名称ではないこともありますが、実質的に墓じまいの費用負担を軽減する助けとなります。
代表的な例としては、公営霊園の返還を促進するためのものがあります。これは、更地にして区に墓所を返還した使用者に対して、奨励金や商品券などを交付する制度です。
自治体例 | 制度の概要 | 備考 |
台東区 | 台東区立谷中霊園の墓所返還者に対し、奨励金を交付 | 墓石の撤去工事完了などが条件。詳細は台東区の公式サイト等で要確認 |
江戸川区 | 区立霊園の返還者に商品券を交付 | 条件を満たして更地で返還した場合。詳細は江戸川区の公式サイト等で要確認 |
小平市 | 小平霊園の返還者にインセンティブを付与 | 墓所の永代使用権を返還する際に適用される場合がある。詳細は小平市の公式サイト等で要確認 |
このように、お持ちのお墓がある自治体によって制度の有無や内容が大きく異なります。そのため、まずはお墓のある地域の自治体公式サイトを確認するか、担当窓口に直接問い合わせることが最初のステップとなります。
補助金の対象者となる詳しい条件
前述の通り、自治体独自の制度を利用するには、定められた条件を満たす必要があります。
対象者となるための条件は制度によって様々ですが、一般的に以下のような項目が設定されていることが多いです。
まず、その制度を設けている自治体の住民であることが求められるケースがあります。また、対象となるのが特定の公営霊園の使用者に限定されている場合がほとんどです。民間霊園の墓じまいでは利用できないことが多いため注意が必要です。
さらに、霊園の使用料や税金などを滞納していないことも重要な条件の一つと考えられます。そして、最も基本的な要件として、墓所を更地にして期限内に返還することが求められます。これらの条件はあくまで一般的な例であり、詳細は各自治体の規定によって異なります。申請を検討する際は、必ず公式の募集要項などを細かく確認することが大切です。
補助金の金額相場はどのくらいか
費用負担の軽減を期待する上で、補助される金額の相場は非常に気になるところです。
東京都内の一部の自治体で設けられている制度の場合、交付される金額は数万円から10万円程度が一つの目安と考えられます。例えば、墓石の撤去費用の一部を助成するという形で5万円を上限とするケースや、霊園の返還に対する奨励金として一律で数万円が支払われるケースなどが見受けられます。
この金額は、墓じまいにかかる総費用の一部を補うものと捉えるのが現実的です。墓じまいの総額は、お墓の立地や大きさ、新しい納骨先の種類などによって数十万円から数百万円に及ぶこともあります。したがって、補助金はあくまで負担を少しでも軽くするための一助と位置づけ、資金計画を立てることが肝心です。実際の金額は各自治体の制度によって定められているため、申請前に正確な情報を把握しておく必要があります。
補助金が使えないケースも知っておこう
補助金の利用を期待していても、実際には使えないケースも少なくありません。事前にデメリットや注意点を理解しておくことで、計画の遅延やトラブルを防げます。
最も多いのは、お墓のある自治体にそもそも補助制度が存在しないケースです。前述の通り、東京都内で制度を設けている自治体はごく一部に限られます。そのため、大多数の場合は補助金を利用できないのが現状です。
また、制度があったとしても、対象者の条件に合致しない場合は申請できません。例えば、「指定された公営霊園の使用者ではない」「税金を滞納している」といった状況が考えられます。
さらに、多くの補助制度は年度ごとに予算が決められています。そのため、申請期間が過ぎてしまったり、受付が開始されても予算の上限に達して早期に締め切られたりする可能性があります。これらの理由から、補助金に頼り切った資金計画を立てるのはリスクがあると言えるでしょう。
墓じまいに必要な費用の内訳と総額
墓じまいを円滑に進めるためには、全体の費用感を把握しておくことが不可欠です。補助金はあくまで一部の補填であり、自己負担額がいくらになるかを知ることが大切です。
墓じまいにかかる費用の総額は、30万円程度から、場合によっては300万円以上と非常に幅広くなります。この費用の差は、主にお墓の解体・撤去費用と、新しい供養先の費用によって生じます。
ここでは、主な費用の内訳を見ていきましょう。
墓石の解体・撤去費用
現在のお墓を更地に戻すための工事費用です。墓石の大きさ、お墓の立地(重機が入りやすいかなど)、石材の種類などによって変動し、20万円~50万円程度が目安です。
行政手続きの費用
改葬許可申請など、行政手続きにかかる手数料です。数千円程度で済むことがほとんどですが、手続きを専門家(行政書士など)に依頼する場合は別途報酬が発生します。
離檀料
お寺の檀家をやめる際に、これまでのお礼としてお渡しするお布施のことです。法的な支払い義務はありませんが、長年の感謝を示す慣習として用意することが多いです。金額に決まりはありませんが、5万円~20万円程度が一つの目安とされます。
新しい納骨先の費用
墓じまい後のご遺骨をどこで供養するかによって、費用が大きく変わります。例えば、永代供養墓であれば10万円程度から、樹木葬は30万円程度から、納骨堂は50万円程度からと、選択肢によって様々です。この費用が、墓じまいの総額を左右する最も大きな要因となります。
墓じまい補助金を東京都で申請する流れ

ここでは、実際に東京都の自治体で補助金制度を利用する場合の、具体的な申請の流れや注意点について詳しく解説します。
- 補助金の申請方法と具体的な手順
- 手続きに不可欠な改葬許可証とは
- 補助金の申請はいつまでにすべきか
- 申請時の注意点やデメリットはあるか
- 不明点を相談できる専門の相談窓口
補助金の申請方法と具体的な手順
補助金を利用する場合、正しい手順を踏んで申請することが求められます。手続きは自治体によって細部が異なりますが、一般的な流れは以下のようになります。
- 事前相談と情報収集: まず、お墓のある自治体の担当窓口(例: 環境課、生活衛生課など)に連絡し、補助金制度の有無、条件、申請期間などを確認します。
- 必要書類の準備: 申請に必要な書類を集めます。申請書のほか、見積書、工事前の写真、改葬許可証の写しなど、多くの書類が求められるのが一般的です。
- 申請書の提出: すべての書類が揃ったら、指定された期間内に窓口へ提出します。郵送で受け付けている場合もあります。
- 審査と交付決定: 提出された書類をもとに自治体が審査を行います。審査を通過すると、「交付決定通知書」といった書類が送られてきます。
- 事業の実施: 交付決定を受けてから、墓石の解体・撤去工事に着手します。多くの場合、交付決定前に契約や工事を行うと補助の対象外となるため、この順番は非常に大切です。
- 実績報告: 工事が完了したら、完了報告書や領収書、工事後の写真などを添えて自治体に報告します。
- 補助金の交付: 実績報告が承認されると、指定した口座に補助金が振り込まれます。
この一連の流れは数ヶ月かかることもあります。そのため、時間に余裕を持って計画的に進めることが成功の鍵となります。
手続きに不可欠な改葬許可証とは
墓じまいを進める上で、補助金の有無にかかわらず絶対に必要となるのが「改葬許可証」です。
改葬許可証とは、現在お墓に納められているご遺骨を、別の場所(新しいお墓や納骨堂など)へ移動させるために、現在のお墓がある自治体から発行される許可証のことを指します。この許可証がなければ、お墓からご遺骨を取り出すことも、新しい納骨先に納めることも法律上できません。
改葬許可証を取得するための一般的な手順は以下の通りです。
- 受入証明書の取得: まず、ご遺骨の新しい受け入れ先となる霊園や納骨堂から、「受入証明書(永代使用許可証など)」を発行してもらいます。
- 改葬許可申請書の入手: 現在お墓がある自治体の役所窓口やウェブサイトから、「改葬許可申請書」を入手し、必要事項を記入します。
- 埋葬(収蔵)証明書の取得: 現在のお墓の管理者(お寺や霊園の管理事務所)から、そのお墓にご遺骨が確かに納められていることを証明する「埋葬(収蔵)証明書」を発行してもらいます。これは、改葬許可申請書に管理者が署名・捺印する形式が一般的です。
- 自治体への申請: 上記の書類一式を揃え、現在お墓がある自治体の担当窓口に提出します。書類に不備がなければ、後日「改葬許可証」が交付されます。
この手続きは複雑に感じられるかもしれませんが、墓じまいの根幹をなす重要なプロセスです。
補助金の申請はいつまでにすべきか
補助金の申請タイミングは、計画全体を左右する非常に重要なポイントです。
最も注意すべき点は、多くの補助金制度で「事業(墓石の撤去工事など)に着手する前」の申請が必須条件となっていることです。つまり、石材店と契約を結んだ後や、すでに工事を始めてしまった後では、申請を受け付けてもらえない可能性が極めて高くなります。
また、補助金は自治体の年度予算に基づいて運営されています。そのため、申請の受付期間が「○月○日から○月○日まで」と明確に定められているのが通常です。この期間を逃してしまうと、次の年度まで待たなければならなくなります。
これらのことから、墓じまいを考え始めたら、できるだけ早い段階で補助金の情報を集め、申請のスケジュールを把握することが大切です。いつまでに申請が必要か、いつ交付が決定されるのかを見越して、石材店との打ち合わせや工事の時期を調整する必要があります。
申請時の注意点やデメリットはあるか
補助金の申請は、費用負担を軽減できるメリットがある一方で、いくつかの注意点やデメリットも存在します。
第一に、申請手続きには手間と時間がかかる点が挙げられます。申請書の記入はもちろん、見積書や図面、写真など、揃えなければならない書類が多岐にわたる場合があります。書類に不備があれば、何度も役所とやり取りする必要が生じ、計画が遅れる原因にもなります。
第二に、申請すれば必ず補助金が受けられるとは限らないというリスクです。審査の結果、条件に合致しないと判断されれば不採択となります。また、申請者が多い場合は抽選になったり、予算の上限に達して締め切られたりすることもあります。
第三に、補助金の交付決定を待つ間、工事のスケジュールを保留にしなければならない場合があります。これにより、墓じまいが完了するまでの期間が長引く可能性も考慮しておくべきでしょう。これらの点を理解した上で、補助金申請を行うかどうかを慎重に判断することが求められます。
不明点を相談できる専門の相談窓口
墓じまいや補助金申請の手続きを進める中で、様々な疑問や不安が生じることがあります。そのような場合に頼れる相談窓口を知っておくと安心です。
まず、補助金制度そのものに関する最も正確な情報を持っているのは、制度を運営している自治体の担当窓口です。東京都の各区市町村のウェブサイトで担当部署(例:「環境課」「くらしのガイド」など)を調べるか、代表電話に問い合わせて確認するのが確実な方法です。
次に、墓じまいの実務的な手続きや費用に関しては、石材店が専門的な知識を持っています。複数の石材店から相見積もりを取る過程で、手続きの流れや注意点について相談に乗ってもらえることが多いです。実績豊富な業者であれば、改葬許可申請のサポートを行っている場合もあります。
さらに、複雑な権利関係が絡む場合や、行政手続きの代行を依頼したい場合は、行政書士が頼りになります。法律の専門家として、改葬許可申請などの書類作成を代行してもらうことが可能です。
これらの窓口を状況に応じて使い分けることで、一人で悩むことなく、スムーズに手続きを進めることができます。
墓じまい補助金で東京都での負担を軽減
この記事では、東京都における墓じまいの補助金制度について、その現状から申請方法、注意点までを網羅的に解説しました。最後に、本記事の重要なポイントをまとめます。
- 東京都全体で統一された墓じまい補助金はない
- 台東区や江戸川区など一部の自治体では独自の制度が存在する
- 多くは公営霊園の返還を促す奨励金という形である
- 補助金の対象者には住民であることなどの条件がある
- 補助金額の相場は数万円から10万円程度
- 補助金は墓じまい費用の一部を補填するものと考える
- 制度がない自治体や条件に合わない場合は利用できない
- 予算上限に達すると早期に締め切られることがある
- 墓じまいの総費用は30万円から300万円以上と幅広い
- 費用の内訳は墓石撤去費用、離檀料、新しい納骨費用など
- 補助金申請は工事着手前に行うのが原則
- 申請には多くの書類が必要で時間がかかる
- 墓じまいには「改葬許可証」の取得が必須
- 不明点は自治体の担当窓口や石材店、行政書士に相談する
- 計画的に情報収集し、スケジュールを立てることが成功の鍵となる