お墓の維持や管理が難しくなり、墓じまいを検討する方が増えています。しかし、いざ考え始めると、費用の総額や複雑な内訳、お寺へのお布施の相場など、分からないことばかりで不安を感じる方も少なくありません。
特に、手続きの流れを把握していなかったり、誰に相談すれば良いか分からなかったりすることで、思わぬトラブルに発展し、失敗や後悔につながるケースも見受けられます。
この記事では、「墓じまい 費用 永代供養 お布施」という関心事をお持ちのあなたへ向けて、費用の全体像から具体的な注意点まで、網羅的に解説していきます。この記事を読み終える頃には、墓じまいに関する漠然とした不安が解消され、自信を持って次の一歩を踏み出せるようになっているはずです。
- 墓じまいにかかる費用の総額と詳しい内訳
- 永代供養やお布施など各費用の具体的な相場
- 費用の負担者やスムーズに進めるための手続きと流れ
- お寺との間で起こりがちなトラブルと回避するための注意点
墓じまいの費用、永代供養・お布施の総額を解説

この章では、墓じまいを具体的に進める上で最も気になる費用面について、その全体像と各項目の詳細を解説します。
- 墓じまいにかかる費用の内訳とは
- 墓石の解体・撤去工事にかかる料金
- 永代供養料の費用相場は種類で変わる
- お布施(離檀料)の考え方と金額の目安
- 行政手続きで発生する書類と手数料
- 新しい納骨先の契約に必要な費用
墓じまいにかかる費用の内訳とは
墓じまいと一言で言っても、そこには様々な工程があり、それぞれに費用が発生します。全体像を把握しないまま進めると、後から想定外の出費に驚くことになりかねません。
墓じまいにかかる費用は、主に「現在のお墓を撤去するための費用」と「新しい納骨先を用意するための費用」の2つに大別できます。具体的には、以下の4つの項目で構成されるのが一般的です。
- 墓石の解体・撤去工事費
- お寺へのお布施(離檀料など)
- 行政手続き関連の費用
- 新しい納骨・供養先にかかる費用
これらの総額は、お墓の状況や新しい供養先の選択によって大きく変動し、一般的には30万円程度から、場合によっては300万円以上になることもあります。まずは、どのような項目にいくらくらいかかるのか、基本的な内訳と費用の目安を把握することが大切です。
費用の種類 | 内容 | 費用の目安 |
墓石撤去工事費 | 墓石の解体、処分、墓地の整地 | 20万円~50万円 |
お布施・離檀料 | 閉眼供養のお布施、離檀料 | 3万円~20万円 |
行政手続き費用 | 改葬許可申請に必要な書類の発行手数料 | 数百円~数千円 |
新しい納骨先費用 | 永代供養墓、樹木葬、納骨堂などの契約料 | 5万円~150万円 |
合計 | 30万円~300万円程度 |
墓石の解体・撤去工事にかかる料金
墓石の解体・撤去は、墓じまいにおける物理的な作業の中心です。この費用は、依頼する石材店や墓地の条件によって変動します。
主な作業内容は、墓石本体の解体、基礎部分のコンクリートの撤去、そしてそれらの廃材の運搬と適切な処分です。作業後には、墓地を更地に戻して管理者に返還します。この一連の作業にかかる費用の相場は、1平方メートルあたり8万円から15万円程度とされています。例えば、一般的な2平方メートルの墓地であれば、20万円から30万円が一つの目安となります。
ただし、この金額はあくまで目安です。墓地が山間部や車両が入れないような場所にあって重機が使えない場合や、クレーン車が必要になるような大規模な墓石の場合は、人件費や作業費が追加でかかり、費用は高くなる傾向にあります。逆に、石材店が処分しやすい平地にある場合は、相場より安く済む可能性も考えられます。
したがって、正確な費用を知るためには、必ず複数の石材店に現地調査を依頼し、詳細な見積もりを取得することが不可欠です。
永代供養料の費用相場は種類で変わる
墓じまい後のご遺骨の新たな供養先として、永代供養が選ばれるケースが増えています。永代供養とは、お寺や霊園が家族に代わってご遺骨を管理・供養してくれる方法です。
この永代供養料は、ご遺骨の安置方法によって大きく異なります。主な種類とそれぞれの費用相場、特徴を理解し、自分たちの希望に合ったものを選ぶことが大切です。
永代供養の種類 | 費用相場 | 特徴 |
合祀(ごうし)墓 | 5万円~30万円 | ・最も費用が安い ・他の方の遺骨と一緒に埋葬される ・一度納骨すると遺骨を取り出せない |
集合墓 | 20万円~60万円 | ・カロート(納骨室)は共有だが骨壺は個別 ・一定期間後に合祀されることが多い |
個別墓 | 50万円~150万円 | ・従来のお墓に近い形で個別に安置される ・一定期間後に合祀されることが多い |
樹木葬 | 20万円~80万円 | ・墓石の代わりに樹木を墓標とする ・自然志向の方に人気がある |
納骨堂 | 20万円~100万円 | ・屋内の施設にご遺骨を安置する ・天候に左右されずお参りしやすい |
最も費用を抑えられるのは、他の方のご遺骨と一緒に埋葬される合祀墓です。一方で、従来のお墓のように個別のスペースで供養したい場合は、個別墓や納骨堂の個別安置タイプが選択肢となりますが、費用は高くなる傾向にあります。
デメリットとして、合祀墓は一度納骨すると二度とご遺骨を取り出せなくなる点、また多くの永代供養墓では将来的に合祀される可能性がある点を理解しておく必要があります。
お布施(離檀料)の考え方と金額の目安
現在お墓があるお寺の檀家をやめることを「離檀(りだん)」と言い、その際に包むお布施を一般的に「離檀料」と呼びます。この離檀料をめぐって、お寺とトラブルになるケースが少なくないため、正しい知識を持っておくことが求められます。
まず大切なのは、離檀料に法的な支払い義務はない、ということです。あくまで、これまでお墓を守り、先祖を供養していただいたことへの感謝の気持ちとしてお渡しするものです。
金額の目安としては、一般的な法要で渡すお布施の額(3万円~5万円程度)に、いくらか上乗せした金額を包むことが多いようです。閉眼供養(魂抜き)のお布施と合わせて、10万円から20万円程度がひとつの相場と考えられます。
もし、お寺から法外な金額を請求された場合は、その場で支払うのではなく、まずは丁重にお断りし、国民生活センターや、墓じまいの手続きを依頼している石材店、または行政書士などの専門家に相談することをおすすめします。
行政手続きで発生する書類と手数料
墓じまいを行い、ご遺骨を別の場所に移すことを「改葬(かいそう)」と呼びます。この改葬には、法律で定められた行政手続きが必要です。
手続きの中心となるのが「改葬許可申請」で、これを現在お墓がある市区町村の役所に提出し、「改葬許可証」を発行してもらう必要があります。この申請には、主に以下の3つの書類が必要となります。
- 埋葬(収蔵)証明書:現在のお墓の管理者(お寺や霊園)から、ご遺骨が確かに埋葬されていることを証明してもらう書類です。
- 受入証明書(永代供養許可証など):新しい納骨先の管理者から、ご遺骨の受け入れを証明してもらう書類です。
- 改葬許可申請書:役所の窓口やホームページで入手できる申請用紙です。故人の氏名や本籍などを記入します。
これらの書類の発行には、それぞれ数百円から1,500円程度の手数料がかかります。費用自体は大きな負担にはなりませんが、手続きには時間がかかることもあるため、墓じまいを決めたら早めに準備を始めるのが良いでしょう。
新しい納骨先の契約に必要な費用
前述の通り、墓じまい後の供養方法として永代供養が広く選ばれていますが、選択肢はそれだけではありません。新しい土地に改めて一般のお墓を建てる、あるいは手元供養や散骨といった方法を選ぶ方もいます。
新しくお墓を建てる場合は、墓じまいの費用とは別に、数百万円単位の費用が発生します。具体的には、墓地の永代使用料、墓石の建立費用、そして年間の管理費などが必要です。
永代供養以外の選択肢としては、以下のようなものがあります。
- 新しいお墓の建立:地域や墓石の種類によりますが、150万円~300万円以上かかるのが一般的です。
- 納骨堂:永代供養を伴うものも多いですが、一時的な安置場所として契約することも可能です。
- 手元供養:ご遺骨の一部または全部を自宅で保管する方法です。小さな骨壺やアクセサリーなどに加工する費用がかかります。
- 散骨:海や山にご遺骨を撒く方法です。専門の業者に依頼する必要があり、費用は数万円から数十万円です。
どの方法を選ぶかによって、必要な費用は大きく変わります。墓じまいにかかる費用だけでなく、その後の供養にどれくらいの費用をかけられるのか、親族間でよく話し合って決めることが後悔しないための鍵となります。
墓じまい費用、永代供養・お布施の注意点と流れ

費用や内訳を理解した上で、次に関係者との調整や具体的な手続きをスムーズに進めるためのポイントを見ていきましょう。費用負担の問題からお寺との関係、一連の流れまで、知っておくべき注意点を解説します。
- 費用の負担は一体誰が払うべきか
- 費用を安く抑えるための3つのポイント
- お寺との間で起こりうるトラブルと対策
- 墓じまいの基本的な手続きと段取り
- 見積もりは複数業者から取るのが基本
費用の負担は一体誰が払うべきか
墓じまいの費用を「誰が払うか」については、法律で明確な決まりはありません。そのため、親族間のトラブルの原因になりやすい問題の一つです。
一般的には、先祖代々のお墓を管理・維持し、祭祀を主宰する「祭祀承継者(さいししょうけいしゃ)」が中心となって費用を負担するケースが多いようです。多くの場合、長男や家を継いだ人が祭祀承継者と見なされています。
しかし、現代では家族の形も多様化しており、祭祀承継者一人が全額を負担するのではなく、兄弟姉妹や関係する親族で話し合い、費用を分担するケースも増えています。例えば、墓じまい後の新しい供養方法が、永代供養のように子孫に負担がかからないものであれば、関係者全員がその恩恵を受けることになります。
したがって、誰か一人が責任を負うという考えではなく、墓じまいを検討する段階で関係する親族全員に相談し、費用の分担について透明性のある話し合いを持つことが、後のトラブルを避けるために最も大切です。
費用を安く抑えるための3つのポイント
墓じまいにはまとまった費用がかかるため、できるだけ負担を抑えたいと考えるのは自然なことです。ここでは、費用を賢く抑えるための3つの具体的なポイントを紹介します。
第一に、墓石の撤去工事を依頼する石材店は、必ず複数の業者から見積もりを取ることです。いわゆる「相見積もり」をすることで、料金の比較検討が可能になり、不当に高い費用を請求されるリスクを避けられます。最低でも3社程度から見積もりを取得するのが望ましいでしょう。
第二に、新しい納骨先の選択を慎重に行うことです。前述の通り、永代供養の中でも合祀墓を選べば、費用を大幅に抑えることができます。どのような形で故人を供養したいかという希望と、予算のバランスを考えて最適な選択をすることが求められます。
第三に、自治体の補助金制度を確認することです。数は多くありませんが、一部の自治体では、管理者がいなくなったお墓(無縁仏)を減らす目的で、墓じまいの費用の一部を補助する制度を設けている場合があります。お住まいの自治体や、お墓がある自治体の役所のホームページなどで確認してみる価値はあります。
お寺との間で起こりうるトラブルと対策
墓じまいを進める上で、最も慎重な対応が求められるのが、現在お墓があるお寺との関係です。感謝の気持ちを伝え、円満に離檀するのが理想ですが、残念ながら高額な離檀料を請求されるといったトラブルも報告されています。
トラブルを未然に防ぐコミュニケーション
トラブルを避けるための最大の対策は、事前の丁寧なコミュニケーションです。墓じまいを決定事項として一方的に伝えるのではなく、まずは相談という形で住職に話をするのが良いでしょう。
その際、「お墓の管理が難しくなってきた」「跡継ぎがいない」といった、墓じまいを考えざるを得ない具体的な事情を誠実に説明することが大切です。これまでお墓を守っていただいたことへの感謝の気持ちを伝えることも忘れてはなりません。
高額な請求をされた場合の対応
もし、話し合いの中で高額な離檀料を求められた場合は、その場で承諾しないことが肝心です。離檀料はあくまで「お気持ち」であり、法的な支払い義務はないことを念頭に置き、一度持ち帰って家族と相談する旨を伝えましょう。
それでも話がこじれてしまう場合は、一人で抱え込まずに第三者に相談するのが賢明です。手続きを依頼している石材店や、法律の専門家である行政書士、弁護士などが相談先として考えられます。
墓じまいの基本的な手続きと段取り
墓じまいは、関係者との合意形成から始まり、行政手続き、供養、工事と、多くのステップを踏む必要があります。全体の流れを把握しておくことで、計画的に、そしてスムーズに進めることができます。
まず最初に行うべき最も重要なステップです。墓じまいは先祖に関わる大切な事柄のため、費用負担も含め、関係する親族全員の理解と合意を得ておきます。
親族の合意が得られたら、次にお墓があるお寺や霊園の管理者に墓じまいをしたい旨を伝えます。円満に進めるため、丁寧な相談を心がけましょう。
ご遺骨をどこで、どのように供養するのかを決め、契約します。契約後、新しい納骨先の管理者から「受入証明書」を発行してもらいます。
現在のお墓の管理者から「埋葬証明書」をもらい、「受入証明書」と合わせて役所に「改葬許可申請書」を提出します。審査を経て「改葬許可証」が交付されます。
お墓からご遺骨を取り出す前に、僧侶にお願いしてお墓から故人の魂を抜くための「閉眼供養(へいがんくよう)」または「性根抜き(しょうねぬき)」と呼ばれる儀式を執り行います。
閉眼供養が終わったら、石材店に依頼して墓石の解体・撤去工事を行います。墓地を更地にして管理者に返還します。
取り出したご遺骨を、契約した新しい納骨先へ納めます。この際、「改葬許可証」の提出が必要です。
見積もりは複数業者から取るのが基本
墓石の撤去工事費用は、墓じまい全体の費用の中でも大きな割合を占めます。そして、この費用には定価がなく、依頼する石材店によって金額が大きく異なるのが実情です。
そこで不可欠となるのが、複数の業者から見積もりを取る「相見積もり」です。1社だけの見積もりでは、その金額が適正なのかどうかを判断する基準がありません。少なくとも3社程度の石材店に連絡を取り、現地調査の上で見積もりを提出してもらうことを強く推奨します。
見積もりを比較する際は、総額の安さだけで判断しないように注意が必要です。見積書には、どのような工事が含まれているのか、追加料金が発生する可能性はあるのか、といった詳細な項目が明記されているかを確認します。
例えば、「墓石解体工事一式」としか書かれていない見積もりよりも、「墓石本体解体」「基礎コンクリート撤去」「廃材運搬・処分費」「整地費用」など、作業内容が細かく記載されている方が信頼できる業者である可能性が高いと考えられます。疑問点があれば遠慮なく質問し、納得できる説明をしてくれる誠実な業者を選ぶことが、後悔のない墓じまいのための鉄則です。
墓じまい費用や永代供養、お布施の悩みを解決
この記事では、墓じまいの費用、永代供養、お布施に関する様々な情報と注意点を解説してきました。最後に、今回の内容で特に重要なポイントをまとめます。
- 墓じまいの総額は30万円から300万円程度と幅広い
- 主な費用は墓石撤去、お布施、行政手続き、新しい納骨先の4つ
- 墓石の撤去工事は1平方メートルあたり8万円から15万円が目安
- 費用は墓地の立地や重機の使用可否で変動する
- 永代供養は合祀墓、集合墓、個別墓などの種類で費用が異なる
- 最も費用を抑えられるのは他の遺骨と一緒になる合祀墓
- 離檀料に法的な支払い義務はない
- お布施はこれまでの感謝の気持ちとして渡すもの
- 高額な離檀料を請求されたら専門家に相談する
- 改葬許可申請には「埋葬証明書」と「受入証明書」が必要
- 費用の負担者は法律で決まっておらず親族間の話し合いが大切
- 複数の石材店から見積もりを取ることが費用抑制の鍵
- 自治体によっては補助金制度が存在する場合がある
- お寺とは一方的な通知ではなく相談から始める
- 最初に行うべきは費用負担も含めた親族間の合意形成
- 手続きの全体像を把握しておくことでスムーズに進められる
- 自分たちの価値観や予算に合った供養方法を選ぶことが満足につながる