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墓じまいを勝手に進めるのは危険!トラブル回避の正しい手順を解説

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お墓の承継者がいない、遠方でお墓の管理が難しいなどの理由から、墓じまいを検討する方が増えています。しかし、手続きが複雑そうだと感じ、誰にも相談せずに進めても良いものか悩む方も少なくありません。

特に、もし無縁仏になってしまうことを避けたい一心で、親族への相談なしに話を進めた場合、後から大きなトラブルに発展する可能性があります。墓じまいには法律上のルールや必要な手続きがあり、費用を誰が払うのかという現実的な問題も生じます。場合によっては、専門家である行政書士への相談が必要になることもあるでしょう。

この記事では、「墓じまいを勝手に進めても大丈夫?」という疑問をお持ちの方へ向けて、起こりうるトラブルやリスク、そして円満に墓じまいを完了させるための正しい手順を分かりやすく解説していきます。

  • 墓じまいを勝手に行った場合の具体的なリスク
  • 親族や関係者とトラブルなく進めるためのポイント
  • 法律や行政手続きで守るべき重要なルール
  • 墓じまいにかかる費用の内訳と負担に関する考え方
目次

墓じまいを勝手に進めた際に起こりうる問題点

まずはお墓の所有者の確認をしよう

墓じまいを考え始めたら、最初にすべきことはお墓の所有者、つまり「墓地使用者」が誰になっているかを確認することです。墓じまいの手続きは、原則として墓地の使用名義人のみが行えます。

多くの場合、お墓を建てた方や代々そのお墓を管理してきた方が名義人となっていますが、すでに亡くなっているケースも少なくありません。その場合、まず名義変更の手続きが必要になります。名義人が誰か分からない場合は、お墓がある霊園や寺院の管理事務所に問い合わせて確認しましょう。

もし、あなたが名義人でないにもかかわらず、勝手に墓じまいを進めようとすると、管理事務所から手続きを拒否されてしまいます。また、親族の中に正式な承継者がいるにもかかわらず、独断で話を進めてしまうと、後々大きなトラブルに発展しかねません。したがって、手続きの第一歩として、現状の権利関係を正確に把握することが大切です。

親族との間にトラブルが起きる可能性

墓じまいを勝手に進めることによって発生する最も大きなリスクの一つが、親族間のトラブルです。お墓は、特定個人の所有物であると同時に、一族にとっての精神的な拠り所でもあります。そのため、たとえあなたが名義人であったとしても、他の親族に一切相談なく墓じまいを進めることは避けるべきです。

何の相談もなしに墓じまいを進めてしまうと、「先祖代々のお墓をなぜ勝手に無くしたのか」「お参りする場所がなくなってしまった」といった感情的な反発を招く可能性があります。一度こじれてしまった感情的なしこりは、簡単には解消できません。

また、墓じまいには少なくない費用がかかります。この費用負担を誰がするのかという問題で、親族間の意見が対立することも考えられます。事前に相談し、皆が納得する形で進めなければ、「なぜ自分だけが費用を負担しなければならないのか」といった金銭的なトラブルに発展するケースも多く見られます。

このような事態を避けるためにも、墓じまいを検討する段階で、関係する親族には必ず声をかけ、それぞれの意見に耳を傾けながら、丁寧に合意形成を図っていくプロセスが不可欠です。

墓じまいをするときの法律や罰則

お墓から遺骨を取り出して別の場所に移す「改葬」には、「墓地、埋葬等に関する法律(通称:墓埋法)」という法律が関わってきます。この法律では、市区町村長の許可なく遺骨を移動させることを禁じています。

もし、自治体から「改葬許可証」を得ずに、勝手にお墓から遺骨を取り出して自宅に持ち帰ったり、別の場所に埋葬したりした場合、この法律に違反することになります。違反した場合は、遺骨遺棄罪などの罪に問われ、罰金や懲役刑が科される可能性もゼロではありません。

「自分の一族のお墓だから大丈夫だろう」と安易に考えてしまうのは非常に危険です。墓じまいは、単なるお墓の引っ越しではなく、法律に則って進めなければならない公的な手続きであることを理解しておく必要があります。法律や罰則の存在を知らずに勝手な判断で行動してしまうと、取り返しのつかない事態を招く恐れがあるため、必ず正規の手順を踏むようにしてください。

墓じまいの費用は一体誰が払うのか

墓じまいの費用を誰が負担するかについて、法律上の明確な決まりはありません。そのため、関係者間で話し合って決めるのが一般的です。

費用の負担者として考えられるのは、主に「墓地の使用者(名義人)」や「墓じまいを主導して進める人」です。しかし、お墓は親族共有の財産という側面もあるため、兄弟姉妹や他の親族と費用を分担するケースも多くあります。

ここで問題となるのが、事前に何の相談もなく勝手に墓じまいを進めてしまった場合です。事後報告で費用負担をお願いしても、「聞いていない話にお金は出せない」と協力を拒否される可能性が高くなります。結果として、墓じまいを主導した人が全ての費用を一人で背負うことになりかねません。

墓じまいの費用は、墓石の撤去費用、離檀料、新しい納骨先の費用などを合わせると、数十万円から百万円以上になることもあります。だからこそ、計画段階で費用の概算を見積もり、誰がどのように負担するのかを親族間で十分に話し合い、合意しておくことが金銭トラブルを避ける上で極めて重要になります。

墓じまいにかかる費用の内訳と相場

墓じまいには様々な費用が発生します。以下に主な費用の内訳と一般的な相場をまとめました。ただし、地域やお寺、石材店によって金額は大きく変動するため、あくまで目安として参考にしてください。

費用の種類金額の相場備考
墓石の解体・撤去費用1平方メートルあたり8万円~15万円お墓の立地や大きさによって変動します
閉眼供養(魂抜き)のお布施3万円~10万円お寺との関係性によって変わります
離檀料3万円~20万円法的義務はありませんが、感謝の気持ちとしてお渡しするのが一般的です
行政手続き費用数百円~1,500円程度改葬許可申請書の発行手数料などです
新しい納骨先の費用5万円~150万円以上永代供養、樹木葬、納骨堂など納骨先の種類によって大きく異なります

墓じまいを勝手にせず円満に進める正しい手順

魂抜き・閉眼供養の意味と進め方

墓じまいを行う際、墓石を撤去する前には「閉眼供養(へいがんくよう)」または「魂抜き(たましいぬき)」と呼ばれる宗教的な儀式を執り行うのが一般的です。これは、お墓に宿っているとされるご先祖様の魂を抜き、墓石を単なる「石」に戻すための大切な儀式です。

この儀式を行わずに墓石を撤去・処分することに対して、心理的な抵抗を感じる方は少なくありません。また、工事を請け負う石材店によっては、閉眼供養が済んでいることを工事の条件としている場合もあります。

進め方としては、まず現在お墓がある寺院のご住職に墓じまいを考えている旨を伝え、閉眼供養をお願いしたいと相談します。日程を調整し、儀式の当日には親族にも参列してもらい、ご住職に読経をあげていただきます。

服装は、平服で問題ないとされることが多いですが、念のためご住職に確認しておくと安心です。この儀式を通じて、親族一同でご先祖様への感謝を伝え、心の区切りをつけることができます。

行政手続きに必須な改葬許可証の手続き

前述の通り、墓じまい(改葬)を行うには、自治体が発行する「改葬許可証」が法的に必要不可かです。この許可証なしに遺骨を移動させることはできません。手続きは少し複雑に感じられるかもしれませんが、一つずつ順を追って進めれば問題ありません。

主な流れは以下の通りです。

  1. 新しい納骨先を決定し、「受入証明書」を発行してもらう 遺骨の次の行き先を決め、その管理者から受け入れを証明する書類(永代供養許可証など)を取得します。
  2. 現在のお墓の管理者から、「埋葬・収蔵証明書」を発行してもらう 今お墓がある霊園や寺院に、誰の遺骨が納められているかを証明する書類に署名・捺印をしてもらいます。
  3. 市区町村の役所で「改葬許可申請書」を入手し、記入する 現在お墓がある自治体の役所(戸籍課や環境衛生課など)で申請書をもらい、必要事項を記入します。
  4. 上記3つの書類を役所に提出し、「改葬許可証」を受け取る 全ての書類が揃ったら役所に提出します。不備がなければ、後日「改葬許可証」が交付されます。

この改葬許可証は、遺骨を取り出す際や、新しい納骨先に納骨する際に提示を求められる非常に重要な書類です。紛失しないよう大切に保管してください。

ご住職へのお布施の相場はどのくらいか

墓じまいでは、お世話になった寺院のご住職に対して、感謝の気持ちを込めてお布施をお渡しするのが慣例です。主なお布施には「閉眼供養のお布施」と、檀家をやめる際に必要となる場合がある「離檀料」の2種類があります。

お布施はあくまで「お気持ち」であり、決まった金額はありません。しかし、ある程度の目安を知っておきたいという方も多いでしょう。

  • 閉眼供養のお布施: 一般的には3万円から10万円程度が相場とされています。お車代や御膳料を別途お包みすることもあります。
  • 離檀料: これまでお墓を守っていただいたことへの感謝を示すもので、こちらも3万円から20万円程度が目安です。法的な支払い義務はありませんが、円満に墓じまいを進めるためにはお渡しするのが望ましいでしょう。中には、過去の寄付などがなかった場合に高額な離檀料を請求されるケースもあるようですが、これは稀な例です。

金額に迷う場合は、同じ寺院の他の檀家の方に相談したり、石材店に地域の慣習を尋ねてみたりするのも一つの方法です。何よりも大切なのは、これまでお世話になったことへの感謝の気持ちを伝える姿勢です。

お墓からの遺骨の取り出し方と注意点

閉眼供養と改葬許可証の取得が完了したら、いよいよお墓から遺骨を取り出す工程に移ります。遺骨の取り出しは、墓石を動かす必要があるため、専門の知識と技術を持つ石材店に依頼するのが最も安全で確実な方法です。

自分自身で作業を行おうと考える方もいるかもしれませんが、それは避けるべきです。墓石は非常に重く、動かす際に倒壊して大怪我をする危険性があります。また、カロート(納骨室)の構造は複雑で、無理に開けようとするとお墓を破損させてしまう恐れもあります。

石材店に依頼すれば、安全に配慮しながら適切に遺骨を取り出してもらえます。取り出した遺骨は、骨壷が汚れていたり破損していたりすることが多いため、きれいに洗浄・乾燥させ、新しい骨壷に移し替える作業(洗骨)も併せて依頼すると良いでしょう。雨などで濡れた遺骨をそのままにしておくとカビの原因になるため、次の納骨まで適切に保管することが大切です。

墓石の撤去工事の流れと業者の選び方

遺骨を取り出した後のお墓は、更地に戻して墓地の管理者に返還する必要があります。この墓石の撤去・処分と整地作業も、石材店に依頼します。

工事を依頼する石材店を選ぶ際には、いくつかのポイントがあります。まず、複数の業者から見積もりを取る「相見積もり」を行うことを強くお勧めします。これにより、費用の相場を把握できるだけでなく、各社の対応を比較検討できます。

信頼できる石材店の選び方

  • 見積書の内訳が明確か: 「工事一式」ではなく、「墓石の解体」「運搬」「処分」「整地」など、作業内容ごとの費用が具体的に記載されているかを確認します。
  • 現地調査をしっかり行うか: お墓の場所や大きさ、重機が入れるかなどを実際に確認せずに見積もりを出す業者は注意が必要です。
  • 許可や資格を持っているか: 産業廃棄物の収集運搬業許可など、必要な許可を得ているかを確認するとより安心です。
  • コミュニケーションが丁寧か: こちらの質問や要望に対して、親身になって分かりやすく説明してくれるかも重要な判断基準となります。

安さだけで業者を選ぶと、後から追加費用を請求されたり、不法投棄などのトラブルに巻き込まれたりするリスクもあります。費用とサービスのバランスを見極め、信頼できる業者を慎重に選ぶことが、墓じまいをスムーズに完了させるための鍵となります。

新しい納骨先を見つけるときのポイント

墓じまい後の遺骨をどこに納骨するかは、非常に重要な選択です。近年では、従来のお墓にとらわれない多様な供養の形が登場しており、それぞれのライフスタイルや考え方に合わせて選ぶことができます。

主な選択肢としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 永代供養墓: 寺院や霊園が、承継者に代わって遺骨を管理・供養してくれるお墓です。他の人と一緒に埋葬される「合祀墓」や、個別のスペースがある「集合墓」など形態は様々です。
  • 納骨堂: 屋内施設に設けられた、個人や家族単位で遺骨を安置するスペースです。天候に左右されずお参りできるメリットがあります。
  • 樹木葬: 墓石の代わりに樹木をシンボルとして、その周辺に遺骨を埋葬する方法です。自然志向の方に人気があります。
  • 手元供養: 遺骨の一部を小さな骨壷やアクセサリーに入れて、自宅で供養する方法です。
  • 散骨: 遺骨を粉末状にして、海や山などに撒く方法です。実施するには法律や条例のルールを守る必要があります。

これらの選択肢を検討する際には、「費用」「宗教・宗派」「アクセス」「管理方法」「後々の供養の仕方」といったポイントを比較し、親族ともよく相談しながら、自分たちにとって最も良い形は何かを考えていくことが大切です。

永代供養のメリット・デメリットを解説

新しい納骨先として多くの方に選ばれているのが「永代供養」です。承継者がいない、あるいは子供に負担をかけたくないという現代のニーズに合った供養方法と言えます。ここでは、そのメリットとデメリットを多角的に見ていきましょう。

永代供養のメリット

  • 承継者が不要: 最大のメリットは、お墓を継ぐ人がいなくても安心してお任せできる点です。
  • 管理の手間がかからない: 霊園や寺院が清掃や供養を行ってくれるため、定期的にお墓を掃除する必要がありません。
  • 費用を抑えられる場合がある: 新しくお墓を建てるのに比べると、初期費用が安く済むことが多いです。
  • 宗教・宗派を問わないことが多い: 無宗教の方や、特定の宗派に属していない方でも受け入れている施設が多くあります。

永代供養のデメリット

  • 一度合祀されると遺骨を取り出せない: 他の方の遺骨と一緒に埋葬される「合祀」の場合、後から特定の個人の遺骨だけを取り出すことはできません。
  • 個別のお墓ではないことに寂しさを感じる場合がある: 従来のお墓のように、家族だけの墓石に向かってお参りしたいという方には、物足りなく感じられるかもしれません。
  • 「永代」は「永久」ではない場合がある: 多くの施設では、13回忌や33回忌など、一定期間を過ぎると合祀される契約になっています。契約内容は事前にしっかりと確認する必要があります。

これらのメリット・デメリットを理解した上で、永代供養が自分たちの家族の形に合っているかどうかを慎重に判断することが求められます。

手続きが複雑なら行政書士への相談も

墓じまいは、親族間の合意形成から始まり、寺院との交渉、煩雑な行政手続き、石材店との契約など、やらなければならないことが多岐にわたります。特に、本籍地が遠方にある場合や、関係者が多くて意見の取りまとめが難しい場合など、個人で全ての手続きを進めるのが困難なケースも少なくありません。

そのような場合に頼りになるのが、法律と行政手続きの専門家である「行政書士」です。行政書士には、墓じまいに必要な「改葬許可申請」に関する書類作成や手続きの代行を依頼することができます。

専門家に依頼することで、以下のようなメリットがあります。

  • 手続きの負担軽減: 面倒な書類の収集や作成、役所への提出などを任せられるため、時間的・精神的な負担が大幅に軽くなります。
  • 正確でスムーズな進行: 専門家が法的な知識に基づいて手続きを進めるため、書類の不備などで手続きが滞る心配がありません。
  • 客観的なアドバイス: 親族間の話し合いが難航している場合などに、第三者の専門家として中立的な立場からアドバイスをもらえることもあります。

もちろん依頼には費用がかかりますが、手続きの複雑さやご自身の状況を考えたときに、「専門家の力を借りた方が円満かつ確実に進められる」と判断した場合は、一度相談してみることを検討する価値は十分にあるでしょう。

まとめ:墓じまいを勝手に行うのはNGです

この記事では、墓じまいを勝手に進めることのリスクと、円満に進めるための正しい手順について解説しました。最後に、本記事の重要なポイントをまとめます。

  • 墓じまいを勝手に行うのは絶対にお勧めできない
  • 最初にお墓の名義人が誰かを確認する
  • 親族への事前相談はトラブル回避の鍵
  • 無断での遺骨の移動は法律で禁止されている
  • 改葬には自治体の「改葬許可証」が必須
  • 費用負担は事前に親族間で話し合って決める
  • 墓石撤去前には「閉眼供養(魂抜き)」を行う
  • ご住職へのお布施は感謝の気持ち
  • 遺骨の取り出しや墓石撤去は石材店に依頼する
  • 信頼できる石材店を選ぶには相見積もりが有効
  • 新しい納骨先には多様な選択肢がある
  • 永代供養にはメリットとデメリットの両方がある
  • 手続きが複雑な場合は行政書士への相談も視野に入れる
  • 全ての関係者が納得する形での進行を心がける
  • 墓じまいはご先祖様への感謝を示す最後の機会
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