近年、お墓の承継者不足やライフスタイルの変化から、墓じまいを検討する方が増えています。しかし、いざ墓じまいを考え始めても、「何から手をつければ良いのか分からない」「手続きが複雑そう」「費用は一体いくらかかるのだろう」といった疑問や不安が次々と浮かんでくるのではないでしょうか。
墓じまいは、単にお墓を撤去するだけではありません。ご先祖様の大切なご遺骨を新しい場所へ移し、供養を続けるための大切な儀式です。そのため、親族との丁寧な話し合いから始まり、多くの行政手続きや法要など、踏むべき手順がいくつも存在します。この複雑なプロセスを十分に理解しないまま進めてしまうと、後々トラブルに発展する可能性も否定できません。
この記事では、「墓じまい 流れ」と検索しているあなたが、安心して手続きを進められるよう、準備段階から完了までの具体的な手順、必要な費用、そして注意すべき点まで、網羅的に解説していきます。
この記事を読むことで、以下の点について理解が深まります。
- 墓じまい全体の具体的な流れと手順
- 準備段階で必要となる関係者との調整
- 行政手続きや法要など実行段階のポイント
- 想定される費用やトラブル回避の注意点
墓じまいの流れと準備段階で知るべきこと

親族との話し合いと合意形成
墓じまいを検討する上で、最初の、そして最も大切なステップが親族との話し合いです。お墓は、個人の所有物ではなく、先祖代々受け継がれてきた一族共有の財産という側面を持っています。そのため、自分一人の判断で進めることは、将来的な親族間トラブルの大きな原因となり得ます。
まず、話し合うべき相手は、お墓の管理に関わっている兄弟姉妹や、お墓に入っているご先祖様から見て子や孫にあたる親しい親戚です。特に、お墓の承継者とされている方がいる場合は、その方の意向を最大限尊重する必要があります。
話し合いの場では、なぜ墓じまいをしたいのか、その理由を丁寧に説明することが求められます。「お墓が遠くて管理が難しい」「承継者がいない」といった具体的な事情を誠実に伝えることで、相手の理解を得やすくなるでしょう。加えて、墓じまいにかかる費用の概算や、誰がどの程度負担するのか、そしてご遺骨を今後どのように供養していくのかという新しい供養先の候補についても、事前に資料を用意し、具体的な計画として提示できると、話し合いはより円滑に進みます。
すぐに全員の合意が得られないことも考えられます。お墓に対する考え方や価値観は人それぞれ異なるため、焦らずに時間をかけて、お互いの意見を尊重しながら落としどころを探っていく姿勢が鍵となります。
新しい供養先となる改葬先の選定
親族間の合意形成と並行して進めるべきなのが、ご遺骨の新しい供養先、つまり「改葬先」の選定です。墓じまいは、現在のお墓からご遺骨を取り出して終わりではなく、その後の供養方法を確保して初めて完了します。この改葬先が決まっていなければ、後の行政手続きで必要となる「受入証明書」を発行してもらえず、手続き全体が停滞してしまいます。
改葬先には様々な選択肢があり、それぞれに特徴や費用が異なります。代表的なものをいくつかご紹介します。
種類 | 費用相場 | メリット | デメリット |
---|---|---|---|
永代供養墓 | 10万~150万円 | ・承継者が不要 ・比較的費用が安い ・管理の手間がない | ・合祀されると遺骨を取り出せない ・個別安置の期間に制限がある場合がある |
納骨堂 | 20万~200万円 | ・屋内で天候に左右されない ・交通の便が良い場所が多い ・セキュリティがしっかりしている | ・お墓参りの実感が薄いと感じる人もいる ・個別安置の期間が限られることが多い |
樹木葬 | 20万~80万円 | ・自然に還るイメージがある ・宗教色が薄い場合が多い ・永代供養墓より費用を抑えられることがある | ・合祀タイプの場所が多い ・一度埋葬すると遺骨を取り出せない |
散骨 | 5万~50万円 | ・承継者が全く不要 ・費用を最も抑えられる可能性がある ・自然志向の方に合う | ・遺骨が手元に残らない ・お参りの対象がない ・親族の理解が得にくい場合がある |
手元供養 | 数千円~数十万円 | ・故人を身近に感じられる ・いつでも手を合わせられる ・費用を調整しやすい | ・全ての遺骨を保管するのは難しい ・最終的に遺骨をどうするか決める必要がある |
これらの選択肢の中から、自分たちのライフスタイルや予算、そして故人やご先祖様への想いに最も合う形を選ぶことが大切です。立地やアクセスの良さ、年間の管理費の有無、宗教・宗派の条件などを総合的に比較検討し、実際に現地へ見学に足を運んで、施設の雰囲気や管理状況をご自身の目で確かめることをお勧めします。
現在の墓地管理者への事前連絡
親族間の合意が得られ、改葬先の候補も固まってきた段階で、現在お墓がある墓地の管理者へ墓じまいを検討している旨を連絡します。公営霊園の場合は管理事務所へ、民営霊園の場合は管理会社へ、そして寺院の境内にある墓地(寺院墓地)の場合は、そのお寺のご住職へ直接伝えることになります。
この事前連絡は、墓じまいの手続きを円滑に進める上で非常に重要な役割を果たします。墓地ごとに定められた墓じまいの手続きや規則、必要な書類について教えてもらえるだけでなく、墓石の撤去工事を依頼できる石材店が指定されているかどうかも確認できます。
特に寺院墓地の場合、この連絡はより丁寧に行う必要があります。墓じまいをすることは、そのお寺の檀家をやめる「離檀」を意味することがほとんどだからです。これまでご先祖様の供養でお世話になってきた感謝の気持ちを伝え、誠意ある態度で相談することが、後のトラブルを未然に防ぐことに繋がります。
このとき、離檀料について話題にのぼる場合があります。離檀料は、これまでお寺が墓地を維持管理してくれたことへの感謝を示すお布施であり、法的な支払い義務はありません。しかし、お寺との関係性や慣習によっては、一定の金額をお渡しすることが円満な離檀に繋がるケースも少なくありません。もし高額な離檀料を要求されるなど、話がこじれそうな場合は、一人で抱え込まず、石材店や行政書士などの専門家に相談することも一つの手です。
石材店の選定と見積もり依頼
墓じまいの実務において中心的な役割を担うのが、墓石の解体・撤去と墓所の整地を行う石材店です。墓地によっては提携している石材店が指定されている場合もありますが、そうでなければ自分で探す必要があります。
石材店を選ぶ際は、必ず複数の業者から見積もり(相見積もり)を取るようにしてください。1社だけの見積もりでは、その金額が適正かどうかを判断するのが難しいからです。少なくとも2~3社に連絡を取り、現地を確認してもらった上で詳細な見積書を提出してもらいましょう。
見積書を比較する際には、単に総額の安さだけで判断しないことが肝心です。見積もりには、どのような工事が含まれているのかが具体的に記載されているかを確認します。例えば、「墓石本体の解体費用」「基礎コンクリートの撤去費用」「廃材の運搬・処分費用」「墓所の整地費用」といった内訳が明確になっているかどうかがチェックポイントです。内訳が「墓石撤去工事一式」のように曖昧な場合は、後から追加費用を請求されるリスクがあるため注意が必要です。
また、見積もりを依頼した際の担当者の対応や説明の分かりやすさも、信頼できる業者を見極めるための重要な判断材料となります。こちらの質問に丁寧に答えてくれるか、実績は豊富かといった点も考慮に入れ、安心して任せられる石材店を選びましょう。
墓じまいと仏壇じまいはどちらが先か
墓じまいを検討する際、同時に「仏壇はどうすればよいのか」という疑問を持つ方も少なくありません。特に、自宅にある仏壇にお墓に入っているご先祖様の位牌を祀っている場合、墓じまいと仏壇じまいをどちら先に進めるべきか悩むことでしょう。
結論から言うと、墓じまいと仏壇じまいの順番に、法律上の厳密な決まりはありません。しかし、一般的には、両方を同時に進めるか、あるいは墓じまいを先に行うケースが多いようです。
仏壇を処分することも「仏壇じまい」と呼び、お墓と同様に、僧侶に読経をしてもらって魂を抜く「閉眼供養(へいがんくよう)」または「お性根抜き(おしょうねぬき)」という儀式を行います。墓じまいの際にも同じく閉眼供養が必要となるため、僧侶の都合がつけば、お墓とお仏壇の閉眼供養を同じ日に行うことで、手間や費用を一度で済ませられるという利点があります。
一方で、新しい供養先が手元供養で、ご遺骨の一部や新しい位牌を自宅で祀る場合は、仏壇を完全に処分するのではなく、よりコンパクトなものに買い替えるという選択肢も考えられます。
これらのことから、まずはご家族や親族と「仏壇を今後どうしたいのか」を話し合うことが先決です。仏壇も処分すると決めた場合は、墓じまいの計画と合わせて、法要の日程などを僧侶やお寺、石材店と調整していくのが効率的な進め方と言えます。
実践的な墓じまいの流れと諸手続き

- 行政手続きである改葬許可証の取得
- 閉眼供養とご遺骨の取り出し
- 墓石の解体工事と墓所の整地
- 新しい納骨先へのご遺骨の引渡し
- 行政書士など専門家への相談も有効
- トラブルを避けるための注意点
- 後悔しない墓じまいの流れの総まとめ
行政手続きである改葬許可証の取得
墓じまいの一連の流れの中で、法的に最も重要な手続きが「改葬許可証」の取得です。この許可証がなければ、現在のお墓からご遺骨を取り出し、別の場所へ移すことは法律で認められていません。手続きは、現在お墓がある市区町村の役所(主に戸籍や住民票を扱う課)で行います。
改葬許可証を取得するまでの流れは、主に以下の3つのステップで構成されます。
1. 受入証明書の取得
まず、新しいご遺骨の供養先となる改葬先の管理者から、「遺骨を受け入れます」という証明書を発行してもらいます。これは「受入証明書」や「墓地使用許可証」など、改葬先によって名称が異なります。この書類が、ご遺骨の行き先がきちんと決まっていることの証明になります。
2. 埋葬証明書の取得
次に、現在お墓がある墓地の管理者(寺院や霊園)に、「このお墓に誰の遺骨が埋葬されているか」を証明してもらいます。これを「埋葬証明書」または「納骨証明書」と呼びます。管理者が、お墓に眠っている故人の氏名などを記載し、署名・捺印をします。
3. 改葬許可申請書の提出
最後に、上記2つの書類(受入証明書、埋葬証明書)と、役所で入手できる「改葬許可申請書」を合わせて、現在のお墓がある市区町村の役所に提出します。改葬許可申請書には、亡くなった方の本籍や住所、死亡年月日などを記入する必要があるため、事前に戸籍謄本などで確認しておくとスムーズです。書類に不備がなければ、通常は数日から1週間程度で「改葬許可証」が交付されます。
この一連の手続きは、申請者本人でなくとも、委任状があれば代理人が行うことも可能です。
閉眼供養とご遺骨の取り出し
行政手続きと並行して、宗教的な儀式の準備も進めます。現在のお墓からご遺骨を取り出す前には、必ず「閉眼供養(へいがんくよう)」という法要を執り行います。これは、墓石に宿っているとされるご先祖様の魂を抜き、単なる「石」に戻すための大切な儀式です。「お性根抜き」や「魂抜き」と呼ばれることもあります。
この法要は、お墓の前で僧侶に読経していただくのが一般的です。菩提寺がある場合はそのお寺のご住職に依頼しますが、ない場合は石材店に紹介してもらったり、インターネットなどで僧侶派遣サービスを利用したりすることもできます。法要の日程は、石材店が行う解体工事の日や親族が集まりやすい日などを考慮して、関係者と調整して決定します。
法要の際には、僧侶へのお礼としてお布施をお渡しします。お布施の金額に決まりはありませんが、3万円~10万円程度が相場と言われています。この他に、交通費として「お車代」や、法要後の会食に僧侶が参加されない場合に「御膳料」を別途お包みすることもあります。金額に不安がある場合は、事前に石材店やお寺に直接相談してみるとよいでしょう。
閉眼供養が終わると、いよいよ石材店によってご遺骨が取り出されます。長年お墓の中にあったご遺骨は、水分を含んで重くなっていたり、汚れていたりすることがあります。石材店によっては、取り出したご遺骨をきれいに洗浄・乾燥してくれるサービスを提供している場合もあるので、必要であれば事前に確認しておきましょう。
墓石の解体工事と墓所の整地
閉眼供養を終え、ご遺骨を取り出した後、石材店による墓石の解体・撤去工事が始まります。この工事は、墓石や外柵、納骨棺(カロート)など、お墓を構成する全ての石材やコンクリートを撤去し、墓所を更地に戻すまでが含まれます。
墓地は、あくまでお寺や霊園から借りている土地です。そのため、墓じまいをする際には、その土地を借りたときの状態、つまり何もない更地にして返還するのが原則となっています。この「原状回復」の義務は、墓地の使用契約書にも明記されていることがほとんどです。
工事の期間は、お墓の大きさや立地条件(重機の搬入が可能かなど)によって異なりますが、通常は1日から数日で完了します。撤去された墓石やコンクリートは、産業廃棄物として法律に則って適切に処分されます。
工事が完了したら、必ず自分の目で現地の最終確認を行ってください。墓所がきちんと更地になっているか、周囲のお墓に傷がついていないかなどをチェックし、問題がなければ墓地管理者に墓所を返還し、墓じまいの一連の作業が完了となります。
新しい納骨先へのご遺骨の引渡し
現在のお墓から取り出したご遺骨は、役所で交付された「改葬許可証」と共に、あらかじめ決めておいた新しい供養先へと持参します。この改葬許可証を改葬先の管理者に提出しなければ、ご遺骨を納めることはできませんので、絶対に紛失しないよう大切に保管してください。
新しい納骨先が永代供養墓や納骨堂、新しいお墓である場合は、ご遺骨を納める際に「開眼供養(かいげんくよう)」という法要を執り行うのが一般的です。これは閉眼供養とは逆で、新しいお墓やご本尊に魂を入れるための儀式で、「お性根入れ」や「入魂式」とも呼ばれます。この法要も僧侶に依頼し、親族で集まって行うことが多いです。
一方、樹木葬や散骨、手元供養といった形を選ぶ場合は、必ずしも開眼供養が必要というわけではありません。それぞれの供養方法のしきたりや、ご自身の宗教観、親族の意向などを踏まえて、どのように納骨の儀式を行うかを決めるとよいでしょう。
この納骨をもって、墓じまいの全ての手続きが完了し、ご先祖様の新しい供養がスタートすることになります。
行政書士など専門家への相談も有効
ここまで見てきたように、墓じまいの流れには、親族間の調整から複数の行政手続き、宗教儀式まで、多くのステップが含まれます。これらの手続きをすべて自分で行うのが時間的に難しい、あるいは手続きの複雑さに不安を感じるという方も少なくないでしょう。
そのような場合には、墓じまいの専門家に手続きの代行を依頼するという選択肢も有効です。特に、煩雑な行政手続きに関しては、「行政書士」が専門家として対応してくれます。
行政書士に依頼できる主な業務は、改葬許可申請に関する一連の手続きです。戸籍謄本の取り寄せから、改葬許可申請書の作成・提出までを代行してもらえるため、平日に役所へ行く時間がない方や、遠方のお墓をしまう方にとっては大きな助けとなります。また、親族間の合意内容を書面(合意書)として残す際のサポートを依頼することも可能です。
もちろん、専門家への依頼には費用がかかります。行政書士への依頼費用は、代行してもらう業務の範囲によって異なりますが、一般的には5万円~15万円程度が目安となります。
費用はかかりますが、複雑な手続きにかかる時間や労力、精神的な負担を大幅に軽減できるという大きなメリットがあります。自分の状況に合わせて、専門家の力を借りることも検討してみる価値は十分にあるでしょう。
トラブルを避けるための注意点
墓じまいは、多くの人やお金が関わるため、残念ながらトラブルに発展してしまうケースも存在します。後悔のない墓じまいにするために、起こりがちなトラブルとその対策を事前に知っておくことが大切です。
親族間のトラブル
最も多いのが、費用負担や新しい供養方法をめぐる親族間の意見の対立です。「墓じまいの費用は誰が払うのか」「なぜ永代供養なのか、新しいお墓を建てるべきだ」といった食い違いが生じることがあります。
対策としては、前述の通り、計画の初期段階で関係する親族全員と十分に話し合い、決定事項を書面に残しておくことが有効です。
寺院とのトラブル
寺院墓地の場合、離檀料をめぐるトラブルが考えられます。法的な根拠のない高額な離檀料を請求され、話がこじれてしまうケースです。
対策としては、まずこれまでお世話になった感謝の気持ちを伝え、誠意をもって話し合うことが基本です。それでも解決が難しい場合は、地域の仏教会や石材店、行政書士などの第三者に相談することをお勧めします。
石材店とのトラブル
見積もりに含まれていなかった作業の費用として、高額な追加料金を請求されるトラブルです。
対策は、契約前に必ず複数の石材店から詳細な内訳が記載された見積もりを取り、契約内容を十分に確認することです。工事内容や費用の範囲を書面で明確にしておくことが、このようなトラブルを防ぎます。
これらのトラブルは、事前の準備や関係者との丁寧なコミュニケーションによって、その多くが回避可能です。焦って進めず、一つひとつのステップを慎重に踏むことが、円満な墓じまいの鍵となります。
後悔しない墓じまいの流れの総まとめ
この記事で解説してきた、墓じまいを計画的に進めるための重要なポイントを以下にまとめます。
- 墓じまいは親族の合意形成から始める
- なぜ墓じまいが必要なのか理由を丁寧に説明する
- 費用負担や新しい供養方法も事前に話し合う
- 新しい供養先となる改葬先は先に決めておく
- 永代供養や樹木葬など供養の選択肢は多様にある
- 改葬先の現地見学で雰囲気や管理状況を確認する
- 現在の墓地管理者への連絡は早めに行う
- 寺院墓地の場合は離檀の意向を誠実に伝える
- 石材店は必ず複数社から見積もりを取って比較する
- 見積もりは総額だけでなく工事内容の内訳を確認する
- 「改葬許可証」がなければ遺骨は動かせない
- 行政手続きには3種類の書類(受入・埋葬・申請)が必要
- ご遺骨を取り出す前には必ず閉眼供養を行う
- 墓石撤去後は墓所を更地にして返還する
- 手続きが複雑な場合は行政書士への依頼も検討する
- トラブル防止のため決定事項は書面に残す
- 全体の流れを把握し計画的に進めることが最も大切